皆さんは、古代中国から伝わる「漢方薬」を利用したことがあるでしょうか。
現代の漢方薬は、副作用が少なく、ドラッグストアなどで手軽に購入できる程非常に身近な医薬品となっています。
そんな漢方薬の中には、ED(勃起不全)や中折れの改善が期待できるものがあるとされています。
本当なのでしょうか。
今回は、EDや中折れが改善できるとされている漢方薬について解説します。
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漢方薬とは?
漢方薬とは、漢方医学の考え方に基づき、複数の「生薬(しょうやく)」を組み合わせて作られた医薬品のことです。
生薬とは、自然界に存在する植物や動物、鉱物などから薬効となる部分を潰したり、砕いたり、乾燥したり、蒸すなどして加工した、漢方薬の原料となるものです。
例えば、風邪薬として知られている「葛根湯(かっこんとう)」は、7種類の生薬から構成されています。
漢方医学は、古代(5世紀~6世紀頃)の中国伝統医学が起源で、1400年以上かけて日本の風土や日本人の体質・体格などに合わせて独自の発展を遂げた医学です。
生薬の種類や量、組み合わせなどが日本独自に工夫され、「漢方薬」が誕生しました。
そして、江戸時代頃に日本の伝統医学として「漢方医学(漢方)」と呼ばれるようになったのです。
現在、日本で用いられている漢方薬は、クリニックや病院などの医療機関で処方される程身近な医薬品として重宝されています。
西洋医学が主流と言われる現代医療の中で、「漢方医学の治療薬(漢方薬)」と「西洋医学の治療薬(西洋薬)」を組み合わせた治療が行われるなど、漢方医学は進化を続けています。
漢方薬と西洋薬の違い
漢方薬は、基本的に複数の生薬を使用している、言わば「配合薬(複合薬)」なので、その中には多くの成分が含まれています。
1つの漢方薬で様々な症状に対応できるため、原因の特定できない何らかの疾患や不調に対してもアプローチすることができます。
また、複数の生薬を組み合わせることで効果の増強や副作用の緩和を図ることができるのも特徴です。
それに対して、「西洋薬(新薬)」は、人工的に化学合成された物質で構成されるのがほとんどで、1種類の有効成分が1つの疾患(1つの症状)に強い効果を示します。
一般的に、疾患の原因が特定でき、原因別の治療をしたり、緊急を要する場合、重症の感染症などには西洋薬の方が優れていると言えるでしょう。
漢方薬と西洋薬の違い
比較項目 | 漢方薬 | 西洋薬 |
---|---|---|
原料 | 天然由来の生薬 | 人工的な合成物質 |
有効成分 | 複数の有効成分が含まれている(多成分) | 1種類の有効成分が含まれている(単一成分) |
効果 | 強力な効果は期待できないが、複数の疾患や症状に効果が期待できる | 特定の疾患を治療する効果が強い |
副作用 | 副作用が少ない | 副作用がある |
効き目の速さ | 即効性はない | 即効性がある |
※基本的な違いについてまとめているため、例外はあります
「病気(疾患)ではなく病人をみる」と言うように、人に主体を置いて治療を行うのが漢方薬です。
それに対して、疾患に主体を置いて治療を行うのが西洋薬です。
EDや中折れの改善に漢方薬は役立つ?
漢方薬の中には、ED(勃起不全)や中折れに明確な効果があると分かっているものが存在します。
そのため、厚生労働省によって認可された一部の漢方薬は、ED治療に対して健康保険の給付対象となり、保険が適用されます。
ただし、漢方薬によって明確に効果が認められるのは、ストレスや緊張、トラウマなどが主な原因となって発症する「心因性ED」だけです。
血管や神経の損傷などが主な原因となって発症する「器質性ED」については、個人差の域を出ておらず、効果の妥当性が判断・証明できていません。
とはいえ、実際にEDや中折れに効果があったという事例も多く報告されているため、漢方薬による効果を完全に否定することができないのが実情です。
その効果の医学的・科学的解明に向けて日々研究が進められている段階なのです。
また、漢方医学において「ED」の概念や名称は、西洋医学などと異なり「陰萎(いんい)」という名称で表現されます。
つまり、漢方薬の添付文書内にある「効能・効果」の欄に「陰萎」という記載があれば、EDや中折れに効果があるということになります。
ED治療に用いられる主な漢方薬
古くからEDや中折れに効くとされ、用いられてきた代表的な漢方薬をご紹介します。
ED治療に用いられる主な漢方薬
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柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)とは、イライラや不安、不眠、心悸亢進などの精神症状がある方に用いられる漢方薬です。
以下の10種類の生薬が配合されています。
配合生薬
- 柴胡(サイコ)
- 半夏(ハンゲ)
- 桂皮(ケイヒ)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 黄芩(オウゴン)
- 大棗(タイソウ)
- 人参(ニンジン)
- 牡蛎(ボレイ)
- 竜骨(リュウコツ)
- 生姜(ショウキョウ)
柴胡加竜骨牡蛎湯は「心因性ED」を改善する効果が高いとされています。
株式会社ツムラが製造販売している「柴胡加竜骨牡蛎湯の添付文書」には「効果・効能」の欄にしっかりと「陰萎」と明記されています。
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)とは、神経衰弱や性的神経衰弱、遺精(夢精)などがある方に用いられる漢方薬です。
以下の7種類の生薬が配合されています。
配合生薬
- 桂皮(ケイヒ)
- 芍薬(シャクヤク)
- 甘草(カンゾウ)
- 大棗(タイソウ)
- 牡蛎(ボレイ)
- 竜骨(リュウコツ)
- 生姜(ショウキョウ)
桂枝加竜骨牡蛎湯は、柴胡加竜骨牡蛎湯と同様に「心因性ED」を改善する効果が高いとされています。
株式会社ツムラが製造販売している「桂枝加竜骨牡蛎湯の添付文書」には「効果・効能」の欄にしっかりと「陰萎」と明記されています。
八味地黄丸(はちみじおうがん)
八味地黄丸(はちみじおうがん)とは、体が冷えやすかったり、疲れやすい方や頻尿や尿漏れなどの排尿障害がある方に用いられる漢方薬です。
以下の8種類の生薬が配合されています。
配合生薬
- 桂皮(ケイヒ)
- 地黄(ジオウ)
- 山茱萸(サンシュユ)
- 山薬(サンヤク)
- 沢瀉(タクシャ)
- 茯苓(ブクリョウ)
- 牡丹皮(ボタンピ)
- 附子末(ブシマツ)
八味地黄丸には、体を温める作用があるため、冷えに伴う痛みを取り除いたり、体全体の機能低下を改善する効果があります。
また、「動脈硬化」による血行不良を改善する効果もあります。
動脈硬化は、EDのリスクファクター(危険因子)であることが知られています。
動脈硬化を改善することでEDの改善にも繋がると考えられているのです。
株式会社ツムラが製造販売している「八味地黄丸の添付文書」には「効果・効能」の欄にしっかりと「陰萎」と明記されています。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)とは、全身に倦怠感のある方や食欲不振がある方に用いられる漢方薬です。
以下の10種類の生薬が配合されています。
配合生薬
- 柴胡(サイコ)
- 蒼朮(ソウジュツ)
- 黄耆(オウギ)
- 当帰(トウキ)
- 陳皮(チンピ)
- 甘草(カンゾウ)
- 升麻(ショウマ)
- 大棗(タイソウ)
- 人参(ニンジン)
- 生姜(ショウキョウ)
補中益気湯には、胃腸の働きを高め、食欲を改善することでエネルギーを蓄えやすくなる効果があります。
そのため、エネルギー不足によって性欲が減退していた場合、食欲不振が改善され、活力が戻るため、EDや中折れにも効果があるとされているのです。
株式会社ツムラが製造販売している「補中益気湯の添付文書」には「効果・効能」の欄にしっかりと「陰萎」と明記されています。
まとめ~より確実性を求めるならED治療薬がおすすめ~
漢方薬には、EDや中折れを改善する効果があるようです。
しかし、より確実にED治療を進めたい方は、バイアグラなどのED治療薬の服用をおすすめします。
何故なら、漢方薬では器質性EDを改善することは難しいからです。
どのような方も年齢を重ねるほど器質性EDを発症する確率が高くなると言われています。
最近、勃起がしづらくなったり、勃起を維持しにくくなってきたなどの心当たりがある方は、ぜひ当クリニックへお越しください。
スタッフより
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