
最近「インポ」や「インポテンツ」という言葉を聞かなくなったと思いませんか。
その印象は正しくて、いまでは勃起しない症状のことを「ED」と呼ぶようになっています。
インポという言葉には侮蔑的な意味が含まれてしまったため差別用語とみなされ、使われなくなったのです。
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インポはドイツ語のインポテンツ(Impotenz)が語源
インポの語源は、ドイツ語のImpotenz(インポテンツ)です。
日本の医療はかつて、ドイツから学んだのでドイツ語が使われたのです。
日本でのインポテンツは「性欲、勃起、性交、射精、極致感のいずれかひとつ以上が欠ける状態」と定義されていました。
インポという言葉が示す概念は、かなり広いのです。
一方、現在普通に使われるようになったEDの語源は、英語のErectile Dysfunctionです。日本語では「勃起障害」や「勃起不全」と訳されます。
かなり狭い概念です。
EDは、インポテンツの広い概念のうち、勃起にフォーカスした言葉なのです。
インポはなぜ差別的なのか
インポが差別的な言葉であると認識されるようになったのは、言葉が示す概念が広すぎるからでしょう。
インポテンツの意味は「性欲、勃起、性交、射精、極致感のいずれかひとつ以上が欠ける状態」なのですが、「あの人はインポだ」と表現した場合、あたかもそのすべてに該当するような印象を与えてしまうのです。
それでインポという言葉の響きには「性的不能者」といったニュアンスが含まれてしまうようになりました。
このような偏見を含む言葉は、医療用語にはふさわしくありません。
差別用語は社会の進化を示す
差別用語は、時代のなかで進化します。
昔は問題にされなかった言葉でも、人々の意識の高まりとともに「人を不愉快にするニュアンスが含まれている」と認識されるようになります。
そうなると、人を不愉快にしない言葉を使おう、という機運が盛り上がります。
そこで社会の合意を得て、特定の言葉を使わないようにします。
差別用語と認定することは、これまでの差別意識をあらためることでもあるのです。
医療には「インポ→ED」以外にも改善された言葉があります。
「精神分裂症→統合失調症」「痴呆→認知症」などがその代表例です。
まとめ~苦しみを与えない取り組み
「昔の言葉のほうが情緒があった」「差別用語認定は言葉狩りだ」「用語だけ変えても差別はなくならない」といった意見があります。
そのような主張にも一理あるかもしれません。
しかしそのような反対意見も含めて、言葉と差別について考え、差別がなくなるように努力していくことは、社会の重要な機能だと思います。
そして特に病名は、そこに差別的な要素が含まれてしまうと、患者さんは病気自体の苦しみに加えて差別されることの苦しみを抱えることになります。
したがって、よりニュートラルで差別性が少ない「ED」のような言葉を使ったほうがいいのではないでしょうか。
スタッフより

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