ED(勃起不全)の治療には、陰茎海綿体注射治療(ICI治療)と呼ばれる治療方法があります。
バイアグラなどのED治療薬やペニスポンプ(陰圧式勃起補助器具)で勃起効果が得られない方に用いられる治療方法です。
そもそも、重度の糖尿病や心臓病などの疾患を抱えていたり、併用禁忌薬であるニトログリセリン(硝酸剤)などを服用している方は、ED治療薬を服用できません。
このような方には、ICI治療が有効とされています。
今回は、陰茎海綿体注射治療(ICI治療)の効果や副作用などについて解説します。
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陰茎海綿体注射治療(ICI治療)とは?
陰茎海綿体注射治療(ICI治療)とは、プロスタグランジンE1誘導体製剤(抗血小板薬)という薬液を陰茎海綿体に直接注射することで、強制的に勃起を促す治療方法です。
1982年にフランスの血管外科医によって発見された革新的なED治療です。
注射に使用する針は、糖尿病患者がインスリン注射で用いられる様な極細の針(約0.3mm)を使用します。
髪の毛程度の細い針を使用し、注入する薬液も少量(約0.4ml)のため、痛みが少なく「チクっ」とする程度で注射は完了します。
海外では、ICI治療を受けた方の約70%~90%の方が効果を実感したと報告されています。
勃起に関わる神経や血管を損傷した器質性EDの方に限らず、心因性EDの方にも高い有効性が認められています。
ICI治療の有効率(基礎疾患別)
骨盤内手術を受けたことがある方 | 59%~90% |
---|---|
脊髄を損傷したことがある方 | 80% |
糖尿病の方 | 75%~92% |
心因性EDの方 | 70%~71% |
骨盤骨折や尿道を損傷したことがある方 | 71% |
血管性EDの方 | 44% |
しかし、日本国内では、厚生労働省から承認された治療方法ではないため、基本的に自己責任で行う治療になります。
ただし、医師の指導を受けることで、自分自身で直接陰茎に注射が可能です。
一般的に、ED治療薬や陰圧式勃起補助具で効果がない、または使用できない方が対象で「陰茎プロステーシス手術」より先に行う治療方法とされています。
注射の打ち方
ICI治療による注射は、一度、病院やクリニックなどの医療機関で医師から指導を受ければ、2回目以降は自分で注射が可能です。
注射の打ち方について解説します。
注射の打ち方
- 片手で陰茎を支える
- 患部を消毒する
- 陰茎の根元に近い側面から真っすぐ針を刺す
- 薬液を注入し、針を抜く
- 患部を再度消毒し、止血するまで押さえる
※神経や血管を避けて注射します
血管内にピンポイントに狙って注射するのではなく、陰茎の大部分を占める陰茎海綿体に注射するので、慣れればスムーズに打てるようになります。
なお、使用した注射器や薬剤のアンプルなどは、医療廃棄物となるため、処方された医療機関で廃棄する必要があります。
自宅で一般ゴミとして捨ててしまうと大問題になるので、注意が必要です。
ICI治療が必要と思われる方
ICI治療は、ED治療の第一選択肢ではありません。
ED治療薬の服用によって勃起効果が得られなかった方などが選択する治療方法です。
ICI治療が必要と思われる方は、以下の通りです。
ICI治療が必要と思われる方
- ED治療薬の併用禁忌薬(飲み合わせの悪い薬)を服用中で、ED治療薬を服用できない方
- 重度の糖尿病や心臓病などのED治療薬を服用できない持病を抱えている方
- ED治療薬を服用しても勃起効果を得られなかった方
- ペニスポンプ(陰圧式勃起補助器具)で勃起効果を得られなかった方
- 衝撃波治療(EDウェーブ)で勃起効果を得られなかった方
- 性的刺激を受けても陰茎が全く勃起反応を示さない方
- 前立腺がんの治療などで勃起に関わる神経や血管を損傷してしまった方
- 医師によってICI治療が必要と判断された方
- etc...
何らかの持病を抱えていても影響を与えることはなく、使用する方を選びませんが、EDになってしまった場合、ICI治療を最初に考えてはいけません。
基本的には、様々なED治療を試した後に医師から提案される治療方法だということを覚えておきましょう。
ICI治療の効果
ICI治療は、ED治療の中で最も即効性のある治療方法です。
性的刺激が無くてもすぐに勃起に至り、長時間維持することが可能です。
ICI治療には、プロスタグランジンE1誘導体製剤(抗血小板薬)に含まれる「プロスタグランジンE1(PGE1)」という物質が効果を発揮します。
プロスタグランジンE1は、血小板が凝集するのを抑え、血管を拡張させ、血流を増加させる作用を持っています。
陰茎海綿体にプロスタグランジンE1を直接注射することで、強制的に勃起が促されるのです。
効果の目安(注射後)
効き始め | 約5分後~ |
---|---|
効果のピーク | 約30分後 |
効果の持続時間 | 約3時間 |
※個人差によって若干変動
個人差はありますが、薬液を注射してから約5後には勃起が始まり、約30分後には効果がピークに達します。
効果の持続時間は、約3時間と言われています。
射精後も勃起が持続するので、EDだけでなく早漏に悩む方にも効果的な治療方法です。
ICI治療の副作用
ICI治療は、安全性が高いと言われている治療方法ですが、もちろん副作用はあります。
しかし、重篤な副作用は確認されていません。
ICI治療の副作用は、以下の通りです。
ICI治療の副作用
陰茎痛(局所の疼痛) | 8%~24% |
---|---|
皮下出血 | 2%~9% |
海綿体繊維化 | 3% |
浮腫・発赤 | 1%未満 |
皮疹 | 1%未満 |
硬結 | 1%未満 |
持続勃起症 | 0.006%~0.9% |
臨床検査値異常 | 0.8% |
頭痛 | 0.7% |
主に、「陰茎痛(局所の疼痛)」や「皮下出血」、「浮腫(むくみ)」などがICI治療によって多く見られる副作用です。
また、副作用ではありませんが、強制的に勃起させているので、感度が著しく低下することもあると言われています。
しかし、どれも一時的な症状で、効果の減退とともに副作用の症状も落ち着いていきます。
ただし、「持続勃起症(勃起が長時間継続する症状)」には注意してください。
持続勃起症が引き起こされるのは稀ですが、万が一起きた場合は、すぐに医療機関へ行く必要があります。
約4時間以上、性的刺激がないにも関わらず、強い勃起状態が治まらずに続く場合は、陰茎の神経や血管を損傷し、勃起機能を永続的に失う可能性があります。
自己注射をする場合には、注射方法などをしっかりと理解した上で、もしもの時の対応方法も予め考えておきましょう。
ICI治療の費用
日本国内では、厚生労働省の承認を得ていないので、もちろん保険は適用されません。
患者が医療費の全額を負担する、自由診療となっています。
注射の際には、その都度使い捨ての注射器や薬剤のアンプルが必要になります。
そのため、ICI治療の費用はバイアグラなどのED治療薬に比べると高額になりがちです。
当クリニックでのバイアグラの処方価格は、1回1錠1,200円~(税込)です。
しかし、ICI治療の平均価格は、医療機関にもよりますが、1回1本で約5,000円~10,000円(税込)が一般的です。
1回の性行為ごとに約5,000円以上かかってしまうので、なかなか手が出せない治療方法と言えます。
効果的な治療方法ですが、経済的な負担が大きくなってしまうということを覚えておきましょう。
まとめ~ICI治療は最終手段~
ICI治療は、性生活において、QOL(生活の質)を大きく向上させる治療方法と言えます。
しかし、まず最初に取り組むべきED治療は、バイアグラなどのED治療の服用であるということを忘れてはいけません。
ICI治療は最終手段として捉えておいた方が良いでしょう。
当クリニックでは、バイアグラやレビトラ、シアリスなどのED治療薬を取り扱っているので、EDで悩んでいる方はご検討ください。
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