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精管結紮術(パイプカット)とは?性欲が衰える?ED(勃起不全)になる?【医師監修】

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精管結紮術(パイプカット)とは?性欲が衰える?ED(勃起不全)になる?【医師監修】

皆さんは「精管結紮術(パイプカット)」という避妊手術をご存知でしょうか。
避妊方法の一つとしてだけでなく、「避妊の必要がなく性行為(セックス)を楽しめる方法」としても知られています。

そんな精管結紮術には、具体的にどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
身近に精管結紮術の経験者がいなければ、正しい情報に触れる機会が少ないはず。

今回は、精管結紮術のメリットやデメリットなどについて解説します。

※当クリニックでは、「精管結紮術(パイプカット)」に関する治療を行っていません

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精管結紮術(パイプカット)とは?

パイプカットのイメージ

精管結紮術(パイプカット)とは、男性が行う永続的な避妊手術(不妊手術)のことです。
精管の一部を切断(切除)して、結紮(結ぶ)し、切断面を電気で焼き潰すことで精子の通り道を塞ぐ避妊手術です。

この精管(パイプ)を切断(カット)する治療方法のため、「パイプカット手術」と呼ばれることもあります。

通常、精巣(睾丸)で作られた精子は、精管を通って、精漿(前立腺液や精嚢分泌液など)と混ざり、精液として最終的に尿道から射精されます。
しかし、精子が通る精管を手術で切断するので、射精時の精液には精子が含まれなくなります。

そのため、避妊成功率はほぼ100%と言われており、一度手術をすれば半永久的に避妊効果が続きます。
コンドームの使用やピルの服用、膣外射精などと比べても避妊が成功する確率は高いとされています。

避妊方法と避妊成功率

精管結紮術 ほぼ100%
卵管結紮術 約99.5%~98%(手術後の経過年数によって変動)
子宮内避妊器具(避妊リング)の使用 約95%~99.8%(避妊器具の種類によって変動)
低用量ピルの服用 約99.7%
アフターピルの服用 約63%~98%(服用時間によって変動)
コンドームの使用 約85%
膣外射精 約20%

※膣外射精は避妊方法ではありません

女性の場合は「卵管結紮術」という避妊手術がありますが、男性が行う精管結紮術は女性と比べて体への負担が少ないと言われています。

精管結紮術の手術方法

手術前の医者

精管結紮術は、局所麻酔で無痛にした後、陰嚢を小さく切開し、精管を糸で縛って切断するだけの比較的簡単な手術です。
精管は通常2本あるので、2本とも切断します。

そのため、手術時間はそれほどかからず、約15分~30分で終了します。
手術を行う医療機関によっては、入院する必要がなく、当日中に帰宅できる日帰り手術をすることが可能です。

手術後の傷跡はほとんど目立たず、勃起時に陰嚢や陰茎が突っ張る様な感覚が残ることもありません。
体への負担が少ない手術としても知られています。

一般的な精管結紮術の手順

  1. 剃毛と消毒を行い、精管の位置を確認する
  2. 陰嚢の皮膚表面に局所麻酔の注射をする
  3. 陰嚢を小さく切開し、精管の一部を引き出す
  4. 引き出した精管を切断し、糸で結紮する
  5. 切断面を電気で焼き潰す
  6. 精管を陰嚢内の元の位置に戻す
  7. 止血後、切開部を縫合して終了

ちなみに、精管結紮術は、基本的に不可逆性の高い手術になります。
精管再吻合術」という精管閉塞部を再吻合させることで、精管を再通させる手術がありますが、100%元の状態に戻せるという保証はありません。

「やっぱり子どもが欲しい」と思っても、授かれなくなる可能性があることを覚えておきましょう。
精管再吻合術を受ける前提で精管結紮術を考えてはいけないのです。

※当クリニックでは、「精管結紮術」に関する治療を行っていません

手術後の注意点

精管結紮術を受けた後は、精管を正常に閉塞させるため、運動や性行為(自慰行為なども含む)などは約1週間控えなければなりません。
さらに、その後の1ヵ月間は、コンドームなどを使用した避妊が必要です。

手術後、1ヵ月~2ヵ月後には、精管内に残っている精子を排出するため、約20回~30回以上自慰行為(マスターベーション)にて射精を行ってから、精液検査を行います。
精液検査の結果で精子が残っていなければ、精管結紮術は本当の意味で完了となり、今後の避妊は不要になります。

ただし、とある研究では、精液検査で精子が認められなくなったとしても2,000分の1の確率で自然妊娠する可能性があるという調査結果が報告されています。
基本的に精管結紮術は永続的な避妊手術ですが、絶対妊娠しないわけではないということを知っておく必要があります。

精管結紮術の費用

電卓を持つ医者

精管結紮術には保険が適用されません
患者が医療費の全額を負担する、自由診療となっています。

精管結紮術の費用は、手術を受ける医療機関などにもよりますが、約5万円~20万円(税込)が一般的です。
費用には、手術前の検査費用や麻酔代なども含まれています。

手術には局所麻酔が必要になるため、必ず麻酔代が発生します。

経済的な負担が大きくなってしまうということは覚えておきましょう。

精管結紮術のメリット

肯定する医者

精管結紮術の主なメリットをご紹介します。

メリット

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避妊具が必要なくなる

避妊具がいらない

手術後は、性行為の際にコンドームなどの避妊具を装着する必要がなくなります

男性も女性も何らかの避妊具を購入したり、装着したりする手間が省けるのです。

また、コンドームを装着しない場合、生の挿入感や射精感を男性も女性も味わうことができます。

ただし、あくまで避妊目的では必要が無いだけです。
コンドームには性感染症を予防する目的もあるので、状況に応じて使用したほうが良いこともあるでしょう。

性行為に集中できる

抱き合うカップル

手術後は、性行為に集中できるようになります。

ピルの服用やコンドームの使用は、精管結紮術ほど避妊成功率が高いものではありません。
そのため、性行為の際には、常に妊娠のリスクが脳裏をよぎってしまいます。

精管結紮術は、避妊成功率がほぼ100%なので、妊娠の心配がなくなります。
性行為中に男性側が「妊娠させてしまうかもしれない」と思ったり、女性側も「妊娠してしまうかもしれない」と不安になる必要がなくなるのです。

お互いに精神的な負担から解放されるため、性行為を存分に楽しめるようになるでしょう。

女性側に負担をかけない

仲のいいカップル

手術後は、避妊する必要がなくなるので、女性側に負担をかけることがほとんどなくなります。

避妊目的で日常的に低用量ピルを服用したり、突発的にアフターピルを服用する必要性がなくなるからです。
また、子宮内避妊器具(避妊リング)など体への負担が大きいとされる避妊もしなくて済みます。

身体的にも経済的にも精神的にも様々な負担を軽減することができるのです。

女性にかかる負担

  • 避妊具を装着する身体的負担
  • 避妊具を購入する経済的負担
  • 妊娠してしまうかもしれないという精神的負担

性感染症を予防する際にも、前述したように男性側がコンドームを装着すれば女性側に負担はかかりません。

精管結紮術のデメリット

注意する医者

精管結紮術の主なデメリットをご紹介します。

デメリット

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元に戻せない

手術できない

精管結紮術によって切断された精管は、基本的に元に戻すことができません

正確には、「完全に元に戻す」ことがほぼ不可能(成功率がかなり低い)とされています。
一度、精管結紮術を受けると、「やっぱり子どもが欲しい」と思って精管再吻合術で精管の通りを再建しても、妊娠まで至れない(授かれない)可能性があるのです。

また、精子を作る必要性がなくなるため、時間の経過とともに精巣の精子造成機能が低下することもあり、デメリットの一つとなります。

100%の確実性はない

妊婦さん

精管結紮術は、100%確実に避妊できるわけではありません

手術後、非常に稀なケースですが、自然と精管が繋がることがあります。

そのため、前述したように、とある研究では、精液検査で精子が認められなくなったとしても2,000分の1の確率で自然妊娠する可能性があるという調査結果が報告されています。
基本的に精管結紮術は永続的な避妊手術ですが、絶対妊娠しないわけではないのです。

出血や感染症を引き起こす可能性がある

溶けたアイス

精管結紮術に限らず、どの外科的手術にも言えることですが、手術直後に出血したり、感染症を引き起こす可能性があります

小さいながらも皮膚をメスで切開するので、軽微な痛みや出血などは避けられません。
切開した傷口から細菌やウイルスなどが入り込んで、感染症を引き起こし、炎症や化膿、腫れなどのトラブルに繋がることがあります。

手術後、入院が必要になるほどの合併症が生じることは非常に稀(約1%以下)ですが、絶対に起こらないとは言い切れません。
精管結紮術を受ける場合には、合併症などのリスクを覚悟しておく必要があります。

精管結紮術のよくある誤解

分からないイメージ

精管結紮術のよくある誤解(嘘、デマ、噂、迷信)について解説します。

誤解しがちなこと

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傷跡は目立たない

医療器具

手術後に「傷跡が目立つ」というのは誤解です。

手術後の傷跡はほとんど目立ちません

「陰茎に傷ができるのではないか?」と心配したり、誤解する方が一定数いますが、切開するのは陰嚢だけです。
陰茎自体には何の影響もありません。

また、切開する部分も少しだけなので、手術後は陰嚢のシワに隠れてしまい、ほとんど見分けがつかなくなります。
抜糸後も後遺症として傷跡が目立つ様なことはありません。

性欲は衰えない

元気な男性

手術後に「性欲が衰える」というのは誤解です。

精管結紮術は、精巣(睾丸)を取り除く手術ではありません。
手術後も精巣自体は、陰嚢内に残り続けます。

そのため、精巣は精子を造成し続け、精巣内にあるライディッヒ細胞も男性ホルモンの「テストステロン」を血中に分泌し続けます。
精管結紮術は、単純に精液から精子だけを無くすものであり、これまでの性生活には全く変化なく、体への害もないとされています。

よく勘違いする方がいますが、性欲が減退したり、精力(活力)が失われ、元気がなくなるということは起こらないのです。
また、男性ホルモン「テストステロン」が減少して、女性っぽくなることもありません。

精力や勃起力は精神的なことが大きく影響します。
「望まない妊娠」という不安がなくなることで、手術後は、性欲が衰えるどころか、より性欲旺盛(精力的)になる傾向があります。

パートナーとの関係も良好になりやすいので、性生活の満足度が高まります。

ED(勃起不全)にはならない

EDのイメージ

手術後に「ED(勃起不全)になる」というのは誤解です。

男性ホルモンである「テストステロン」は産生され続けるので、勃起力が減退し、ED(勃起不全)になることもありません

切断するのは精管だけです。
勃起に関わる血管や神経を切断するわけではないため、勃起力に変化はないのです。

手術後に「勃起力が低下する」や「EDになる」などというのは、噂やデマ、迷信に過ぎません。
精管結紮術を受ける患者の年齢層が30代以降に多く、ちょうどEDを引き起こしやすい年代と一致しているため、こういった迷信が信じられ、広まっていったと思われます。

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射精時の感覚は変化しない

射精のイメージ

手術後に「射精時の感覚が変化する」というのは誤解です。

手術後に射精時の感覚が変化することはありません

また、「精液が出なくなる?」「精液が少なくなる?」と心配になる方もいますが、そんなこともありません。

精液を構成する成分のほとんどは精嚢や前立腺から分泌される「精漿(前立腺液や精嚢分泌液など)」という液体です。
そして、その中に含まれる精子はとても微量なものです。

手術後でも精漿は以前と変わらない量が分泌され、微量な精子がなくなるだけなので、射精時の精液量はほとんど変わりません。
精液が出なくなったり、少なくなる様なことはないのです。

精液自体は今までと変わらずにたくさん出るため、射精時の感覚がなくなったり、射精時の気持ち良さが変わることもありません。
逆に、射精時に「妊娠させてしまうかもしれない」という不安がなくなるので、より純粋に性的快感を得られる傾向があります。

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前立腺疾患との関連性はない

お尻を押さえる男性

手術後に「前立腺疾患のリスクが高まる」というのは誤解です。

精管結紮術は、前立腺疾患(前立腺炎、前立腺肥大症、前立腺がんなど)との関連性はありません

手術後に前立腺疾患のリスクが上昇するということはないのです。
前立腺疾患は、男性ホルモンの「テストステロン」との関係が深いことが知られていますが、精管結紮術はテストステロンの分泌量を変化させるものではないからです。

ただし、とある調査の中には、精管結紮術が前立腺がんなどの前立腺疾患に与える影響が全く無いとは断言できないとする研究結果もあります。

心配な方は、手術後に定期的な前立腺特異抗原(Prostate-Specific Antigen:​PSA)検査という血液検査をおすすめします。

PSAとは、前立腺から分泌される「セリンプロテアーゼ」というたんぱく質分解酵素のことです。
がんや炎症によって前立腺の細胞組織が壊れるとPSAが血中に漏れ出し、PSA値が上昇します。

PSA検査で血中に漏れ出したPSA値を調べれば、前立腺がんなどの前立腺疾患を発症しているかどうかが分かります。

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性感染症の予防はできない

ヘルペスウイルス

精管結紮術に「性感染症の予防効果がある」というのは誤解です。

精管結紮術は、避妊を目的とした手術なので、性感染症に対する予防効果はありません

コンドームを装着しなくても避妊が可能になるだけで、性感染症の予防はできないのです。
性感染症のリスクをできるだけ下げたいのであれば、コンドームを使用しましょう。

まとめ~安易に手術を受けてはいけない~

精管結紮術は、性行為を楽しみ、性生活の質(QOL)を高めることだけを目的とした手術ではありません。
避妊によって明るい家族計画を実現するために行うものでもあります。

そのため、精管結紮術は、将来の生き方を左右することに繋がります。
安易に手術を受けてはいけません。

メリットやデメリットをしっかり把握し、必ずパートナーと相談して、双方の同意の下で手術を受けることが大切です。

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